鞍馬山の信仰は、宇宙の大霊であり大光明・大活動体である
「尊天」を本尊と仰いで信じ、「尊天」の心を我が心として
生きてゆくことで、尊天信仰と言います。尊天とは、人間を
初め、この世に存在するすべてを生み出している宇宙生命・
宇宙エネルギーです。真理そのもので、神仏の区別を超えて
ひとつの形に固定されず、しかも本質を保ちつつ、森羅万象
、日月星辰、あらゆる神あらゆる仏の相(すがた)となって
顕現します。そのお働きは愛と光と力となってあらわれ、ま
た月に代表される水の氣、太陽から放たれる氣、母なる大地
、地球の氣の三つの「氣(エネルギー)」にあらわし、それぞれを
月輪の精霊―愛=千手観世音菩薩
太陽の精霊―光=毘沙門天王
大地の霊王―力=護法魔王尊
のお姿であらわして、この三身を一体として「尊天」と称し
ます。それ故に「月のように美しく、太陽のように暖かく、
大地のように力強く」と祈り、
「すべては尊天にてまします」とお唱えするのです。
苔を巣穴に運ぶアルマンモモアカアナバチ
「山川草木悉皆成仏」という教えにあるように、非生命から 生命まで、森羅万象の全てが宇宙生命エネルギーである「尊 天」の顕現です。鞍馬山一帯は、大自然の宝庫で、往古か ら社寺林として守り継がれ、「京に最も近く、最も深い自然」 と称されてきました。人の手の加わらない鞍馬山の自然は、 動植物が網のように相互に関係しあって複雑な森林生態系 を形成しており、鞍馬山ではその響きあいを「羅網」とし て表し、「共に生かされている命」を共感し、様々な命が支 え合い響きあい、生かし合っていることに気づき、私たち の「いのち」が本来、光り輝く宝珠であることに目覚めて 欲しいと願っています。
本殿内陣を荘厳する羅網
鞍馬寺貫主 信樂香仁